21時の珈琲

企画職ワーママ(育休中)の育児、読書、考え事記録。

運命に逆らわない。『とっぴんぱらりの風太郎』を読みました

誰にも雇われず仕事がないプータロー忍者、「風太郎」の、大阪冬の陣・夏の陣を巡る物語。
……と聞くと「なんだ、ただの時代小説か」という印象がありますが、ここに「妖のひょうたん」と「個性豊かな登場人物」が加わることで、鮮やかな「忍者活劇ファンタジー」ができあがるのです。


上下巻合わせて800ページ超えの超大作ですが、あっさりと読むことができます。
冒頭、忍びの世界を生きる風太郎の様子と、彼が何故ニートになってしまったか、その経緯が描かれます。ニートになったことで、京や大阪でのんびり堕落的な生活をするのですが、ひょっとしたことをきっかけに「ひょうたん屋」の手伝いをすることになり、気づけば大阪の陣に参加しており……。

気づかずうちに人生の岐路に

人生でも、「いつの間にここまできたのだろう」と思う瞬間はありますよね。どこが分岐点だったのだろう、自分はその時こんな選択をしたっけ?なぜここまで歩いてきたのだろう、どうやって?

それが、この本には自然にあるのです。「この先こうなるだろうなぁ」という先読みや予感を一切感じさせない。
いつの間にか時代の大局に身を投じている。

後半は、前半ののんびりした雰囲気が嘘のような、スリリングな展開になります。
私は前半、途中で読むのにダレてしまって、かなり時間をかけてしまいましたが、後半はぐんぐん読み進めることができました。

妖のひょうたんがこの戦にどう関係して、それが運命にどんな変化をもたらすか……。
「仲間」とも思っていなかった、忍び仲間との間にも絆が生まれていきます。

お世話するのは愛しているから

特に私が気に入っているのが、最後の数ページ。
このラストまでは、ひたすら風太郎の奇妙な生き方が綴られているのですが、ここでは心の動きがとても丁寧に描かれるのです。

幼馴染にもかかわらず、好きとか嫌いとか、そういった感情が発生しえない関係であり、ある時は憎さのあまり風太郎が手をあげてしまった女の台詞。
「あんたの世話をするの、楽しかった――、とても」。

どんなに非情な人間であっても、他人の世話をしたくなるのは、その人を愛しているからではないでしょうか。
お世話なんてものは、ただ面倒臭いだけなのに、それが愛している人ならば、なぜ進んでしたくなるのでしょうか。

不思議ですね。私も、夫の身の回りのお世話をするの、とても楽しいです。



老若男女楽しめる作品だと思いますので、和風×ファンタジー好きな方はぜひどうぞ。

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