東京のコロナ感染者が増えている中、こんなことを言うのは気が引ける。
「絵画なんて、教科書で見るのといっしょ」
そう思っていた私が、ああこれはリアルでないと、と感銘を受けた展示があった。
それは、2015年に開催されたモネ展の「印象、日の出」。

ちょうど、太陽が描かれている部分に光があたって、本当にきらきらと輝いていた。
絵が発光していた。
空のうねり、水面の揺れの、
絵の具がのった感じ、その感触。
印刷されるのとは違う、モネの目で見た色彩。
こういうのは、本物を見に行かないと、わからない。
印刷されたペーパーや、映し出されたディスプレイでは伝わらない。
おんなじことは、音楽にも言える。
オーケストラの演奏は、ぜひ一度、ホールで聴いてみてほしい。
演者の息遣い、弓のこすれる音まで聞こえてくるよう。
その演奏会がいかにアツいか、そのアツさに自身が脈打つ感覚は、やっぱり聴きにいかないと、わからない。
アートは、食べていくのに何の役にも立たない。だけど、生きていくのにとても役に立つ。
本質を見抜く力。
普遍的な価値を知ること。
相手と比べないで自分を保つ方法。
知らなかった自己を省みる時間。
机の前に向かわなくても、ちょっと美術館やホールに行くだけで、少しわかったかんじがする。
それはきっと、「息苦しいなぁ」という日常にとって、ひとさじのスパイスになる。
ぜひに、オフラインで感じてほしい。そういう時は、目一杯好きなお洒落をしてね。
何でもない日に大切な家族や友人と一緒に訪れて、帰りにはお茶を飲んで帰る、あの日常が戻ってくることを、切に願っています。
