21時の珈琲

企画職ワーママ(育休中)の育児、読書、考え事記録。

明けない夜はない、毎日生きていかなくちゃ。『老人と海』を読みました

 
アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』を読みました。

 

どんな本?

84日間不漁が続く老漁師が大魚と出会い、奮闘し、港まで帰る、人生万事塞翁が馬な物語。
 

この本から得られること

これが最後のチャンス!と思って頑張っても、そのチャンスを掴みきれないこともある。
でも、また明日はやってくる。生きなきゃいけない。それがつらい。
こんな夜を過ごすのは全世界で自分ひとりだけ…と思いがちですが、そうではない。この主人公のように、誰だって悔しい気持ちを抱えることはある。みんなにその夜は訪れる。
 
だから例えアンラッキーであっても、みじめに思わなくていいじゃない。
 

こんなアナタへおすすめしたい

・今がうまくいっていない
・中高年
・ノーベル文学賞受賞作品が読みたい
 

イケおじではないけれど…

イケおじ(イケてるおじさん)の話かと思い最初のページをめくったら、開口一番、

漁師は老いていた。

 

で、ええーー!?と脱力。で、結局、やっぱり終始イケおじではないです。くたびれている。
でも、目の鋭さ・魂の強さは天下一品。しかもハンパないメンタルタフネスです。
 
私はハッピーエンド大好き人間なので、このまま大魚を釣れてハッピーイエーーイ!(サンシャイン池崎の音量で)な展開を想像していたら、最後に悲劇が…。
人生とはかくも辛いものか。
それでも老人は、悲観しすぎることなく港につき、疲れた体を休めるのです。
 

自分をいじめすぎない

大きな失敗をしたり、恥ずかしい思いをしたり、大人になっても「もう今日は最悪!」という日はありますよね。
こんなにみじめなのは全世界で自分ひとりだけ…なんで私ってこんなにダメなんだ…と悲観したくなります。
 
でも、この老人に比べたら私の悲観なんてかわいいものかも。だってこの人、たぶんこの大物に命賭けてましたよ。
そのチャンスを掴みきれなかった。それでも、恨み言ひとずいわず、布団に入ってまた明日を迎える。
 
人間は、恥ずかしても、悲しくても、命ある限り生きていかなきゃいけない、そう思わないと生きていけない。
みんなそうやって生きているんだと思うんです。
すると、こんなつらい夜を過ごすのは自分ひとりじゃないと思えてくる。
さっさと寝てしまって、また次の日、一からがんばる、その生活の連続が「生きる」ということではないでしょうか。
 

漢のプライド

夫曰く、「男ならわかると思うんだけど、腕っ節の強さというか、体の強さ、力の強さというのは、いくつになっても負けたくないという思いがある」。男性とはそういう生き物らしいのです。
 
そんな中、主人公の老人はもはや何も持ちません。過去の栄光だって、84日間不漁という事実にかき消され、体力は衰え、周りから憐れまれる存在。
 
だけど漁師としての矜持は持っており、完全には枯れきっていない。
人にどう思われようが「自分はこうだ」という信念があればそれだけで生きられる、なんともハードボイルドな男です。
 

機能価値と存在価値の違い

たしかに周囲からの哀れみはありますが、それはただ、利益があがらないことに対するもののみであって、老人自身にダサいとか、早く引退したらいいのに、とかそういう感情はないんじゃないかなぁと思います。
 
むしろ、老人に対してはリスペクトの気持ちが多少あって、だから最後、港のみんなは優しかったんじゃないかなぁ、と。
それはきっと、この老人がいつまでも等身大だからでしょう。
等身大でいられる=自分に自信があるんだと思います。
それは過去の実績があってこそ。
 
私もこれから年をとって、肉体的にできないことも増えてくるかもしれませんが、魂は良くありたいものです。
 

初ヘミングウェイ作品でした

本作はもちろん、彼の著作は感情がダイレクトには描かれていない点で「ハードボイルド」と評されることが多いそう。
たしかに、内面の描写は少ないです。この作品では、老人が朝起きて漁に出て帰ってくるまでの出来事を淡々と表現していて、精神世界といえば途中で気が遠くなった時に過去を反芻する程度。
 
ただそれだけなのに、そこから人間という肉体や生命の美しさ、海や自然への敬愛の念をしっかりと読者に感じさせるところはさすが。
 
(もはや前時代的価値観かもしれない)漢(おとこ)の生き様をハードボイルド的に表現しながら、ヘミングウェイの主義を融合した点で上手い作品だな、さすがはノーベル賞受賞作と思いました。
 
 

 

★★(★2:楽しめる)