
(画像:もしアドラーが上司だったら | PRESIDENT STORE (プレジデントストア)より)
どんな本?
キュートな上司「ドラさん」からアドラー心理学を学びながら成長するサクセスストーリー。
この本から得られること
- 勇気
- 自分と他人を分けて考える
- 仕事も子育てもポジティブ思考に
こんなアナタへおすすめしたい
- 若手社員
- 管理職
- 職場に停滞感がある
- 子供にイライラしてしまう
「アドラー式子育て」を知って
2019年、アドラー心理学というものを知りました。
2019年度のペアレンティングアワード - 人気雑誌が選ぶ子育てトレンド )で「アドラー式子育て」が紹介されていたのがきっかけです。
ワーママにも慣れて仕事が忙しくなり、イヤイヤ期が始まった娘の相手にも疲れ、いつもイライラしていました。
この言葉だけメモって、「いつかアドラー心理学を調べよう」と誓ってもう3年経ってしまいました。
アドラー心理学とは
オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーが提唱した理論です。
心理学の分野ではフロイト・アドラー・ユングという3人が現代の心理療法を確立したといわれているようです。
3人ともオーストリア出身ですね。
余談ですが、フロイトは大作曲家であるグスタフ・マーラーを診察しています。
この辺りは映画「マーラー 君に捧げるアダージョ 」という映画に描かれているようです。
私はまだ見たことがないので、今度見てみたいなぁと思います。
この本では、アドラー心理学のキーワードとなるのが「勇気」と「共同体感覚」だと紹介されています。
勇気を持って困難を制す
困難を克服する活力を、アドラー心理学では勇気と呼びます。
そしてこの本では、まず「勇気を持つこと」を身に着けます。
答えのない課題、込み入った人間関係…困難な挑戦に果敢に取り組むには、なにが必要か。その土台にあるのが「勇気」です。
勇気を持つために必要なことは、
- できていることや長所に注目する(「正の注目」をする)
- 短所や失敗をいつまでも考えない(「負の注目」をしない)
この心の持ちようを「勇気付け」と呼び、この本では勇気付けができるように、いくつかの技術が紹介されています。
ネガティブな言葉かけ=勇気をくじく
ちなみに負の注目をすることは「勇気くじき」と言います。
以下のフレーズが何度も出てきます。
ダメだと思いながら頑張るのは、ブレーキを踏みながらアクセルを踏むようなもの。
私たちは負の注目をしがちなので、どうしたら正の注目ができるか?が焦点になります。
自己受容すること
正の注目をするためには、揺るぎない自分でないと怖くてできません。
自信をもって、自分は自分のままでいいんだ、ありのままでいいんだと思えること。
ありのままの自分を受け入れることを「自己受容」と言います。
ダメな自分も、卑屈にならず、真実を都合よく解釈せず、そのまま受け入れる。
失敗した時の方が闇堕ちして深く考えちゃいますが、そんな時は、あぁ、失敗しちゃったなー、と、ただ事実を認めるだけ。
自分はこれができてるから、次もできるはず。 たまたま失敗しちゃったけど、でも以前も、できなかったことに挑戦し続けたからできるようになった。
そういうマインドがあれば、また挑戦できます。
挑戦できる力の原点
何度でも挑戦できる力は、自己肯定感がある、自分に自信があることで湧いてきます。
平成20年度の東京都教職員研修センター「自尊感情や自己肯定感に関する研究」によると、青少年のマインドとして、
- 意欲を行動に移す負担感が大きい(意欲はある)
- 行動してみたが、失敗した絶望感から抜け出せず、再挑戦しようという意欲がわかない、あるいは行動できない
だそうです。
せっかく、なにかやろう、という意欲を持ってるのに、それを溜め込んじゃうのはとてももったいないです。
経験値が貯まってくると、行動することの難易度は下がって、代わりに意欲自体を見つけるのが難しくなると感じているので(ある程度惰性でできてしまう)、子どもや若手にはぜひ意欲を持ち続けてほしいなぁ。
なので、どうやったら自己受容できる(自己肯定感を高められる)か?が次の問題です。
機能価値と存在価値を分ける
- 機能価値…能力や実績で測られる価値。比較される。
- 存在価値…存在しているだけで発揮される価値。比較されることはない。
私たちはだれしも存在価値を持っていて、私という人間の存在価値は誰からの評価にもよらず、ゆるがず、当然にあるものということです。
こんな一節がありました。
言い換えれば、「Doing」と「Being」だ。
君は、ちょっとした仕事のやり方(Doing)が上手にできずに「機能価値を」うまく発揮できていないだけだ。でもそんなの訓練や経験でなんとでもなっていく。焦る必要なんてないし、自己否定する話ではない。
なのに、君は、君のもっと大切な「Being」つまり「存在価値」まで否定してしまっている。仕事がうまくいっていない人は人間としてもダメな存在、劣った存在だ」と自分で自分の人格まで否定してしまっている。それは、大間違いだ。
こう言ってもらえると、私っていていいんだ、と思えますよね。
ある程度の年齢になれば、存在価値は自分の生き方が証明します。愛してくれる家族や友達がいる、それは自分がそういう関係性を築いていたからだ、と。
だけどそうなる前までは、やっぱり無条件の愛情が必要だと思うのです。 この本でも、主人公があこがれる同期がアドラー心理学を体現しており、それを上司に尋ねると「ご両親の接し方がよかったのだろう」。
自分で存在価値を認めるためには他者からの無条件の愛情という根拠があってはじめて可能だと思います。
だから子供たちにも正の注目をしていきたいし、職場の若手にも同じまなざしを向けていきたい。
共同体感覚=同じ社会で生きている
この本で挙げていた、アドラー心理学のもう一つのキーワード「共同体感覚」。
他人は敵ではなく同じ共同体なんだ、という感覚をいうらしいです。
人は弱い生き物だから共同体感覚がないと生きていけない。
人間は社会の中で生きているので、これは正しいと思いました。
私が特にしびれたのは、
「(共同体のために)見返りがなくても自分から始める。リーダーとは、自分から始められる人のことだ」という言葉です。
管理職をやっていた頃、チームメンバーの不満や突き上げに苦しい思いをしていました。彼らの発言にも一理あることがわかってしまうからです。
上から言われて急遽仕様変更。無茶な期日。文句を言いたくなるのもわかりますが、そこで迎合しては発展しないんですね。
まずはやってみる、その上で今後改めてもらいたい行動を伝える。ただ不平を言うだけでなくて、建設的な議論をする。
今までは「私の力じゃそこまで無理」と思っていましたが、復帰してからは「無理だと思っても、自分からやるのがリーダー」と思ってがんばれそうです。
感想と、取り入れたいこと
意外と手厳しい
アドラー心理学は、厳しい現実社会を生きる私たちに寄り添ってくれる、そんな学問だと思いました。
心の持ちようとしては、とても美しいんです。たとえば、
- ありのままでよい(失敗しても問題ない)
- できてるところに注目しよう
- 人を称えよう
これだけの世界だったら、とても美しいですよね。
でも私たちが住んでるのは、おとぎ話の世界じゃない。
良い社会にするには利益を出さないと事業が存続できない。
だから仕事をするんです。成果が出なくても「ありのままでいいよ~Let it go~♪」は通用しない。
でも、だとしたら、やっぱり厳しく叱咤激励しないと成長できない…?
と、「0か100か」思考に陥りがちです。
そこのところ、主人公の上司であるドラさんは上手です。
心の持ちようと行動のとり方は違う、とはっきり分けて考えています。
言い換えれば、存在価値と機能価値を分けて評価しています。
部下に対して、ありのままの君が好きだと言っておきながら、(会社という共同体のために)ミスをしたので減点、と述べています。
また、「やりたいけどできない/やりたくないけどやらねば、は存在しない」とも言っています。
たとえば「ダイエットしたいけどケーキを食べたい」は、つまるところ「ケーキを食べたい」のだと。
その前段は単なる言い訳だと切り捨てています。
例として、憂鬱な仕事をやらなければならないとします。
本音を言うとやりたくないが、やらねばならない。
→やらなくてもいいよ
やらないと先方や会社に迷惑がかかる
→かかってもいいよ
自分の評価が下がるのが嫌だし…
→「評価が下がるのが嫌」だからやる、んだよね?
という理屈。
これはキビシイなと思いました。
ただ、人はやらされていると思うとやる気を失って、自分がコントロールできていると思うとがんばれる生き物でもあるので、このマインドセットはぜひ持ち続けたいと思います。
どうせ同じく行動するなら、自ら好き好んでやってるんだ!と思う方が楽しいですしね!
子育てに取り入れたい
日本の子供たちの自己評価は、国際的に見て低いことがわかっています。*1
子どもたちがどういう進路を歩むかはわからないけれど、いつ、だれとでもコミュニケーションをとっていける人にはなってほしいと思います。
自尊感情、自己肯定感を育むためには以下の経験をさせるのが効果的とのこと。
目から鱗の部分もあったので、私に特に欠如していた部分は太字にして、今後育児に取り入れたいと思います。
意識して取り組みたいこと
- 自分への気付き
自己決定させる、ルールや目標をもたせる
- 自分の役割
役立っていることを実感させる、周りの人からの肯定的な評価を受ける場を設定する
- 自分の個性と多様な価値観
自分の考えを大切にさせる、多様な価値観を理解させる
- 他者とのかかわりと感謝
多様なかかわりを経験させる、周りの人に支えられていることを実感させる
- 自分の可能性
できたことを実感させる、否定的な面に対する気持ちを切り替えさせる、他者との同様性に気付かせる
子どもに「こうしなさい」と親の価値観を伝えることは簡単で、一方、子どもの内省を促したり、子どもに気付かせたりするのは骨が折れます。
でもこの時間や、親の我慢が、将来の子どもを形作ると思って、根気強く、「これも重要な子育てだ」と思いながら、声掛けを続けたいです。
多様な価値観を理解させるには、「百聞は一見にしかず」だと思う
核家族であり、夫婦ともに同じ大学出身のわが家の難しいところは、「多様な価値観を理解させる」箇所。ともすれば同じ価値観の人間に囲まれがちです。
私は公立中高出身です。本当にいろんな子がいました。
せっかく同じ大学に進学したのに、家庭の事情ですぐに退学してしまった友達。その後のその子の運命。
あの日、あの時、もっと違う声かけができなかったかな。もっと福祉につなげてあげられなかったのかな。その後悔が、私の今後のやりたいことや夢につながっています。
子どもは今のところ、私立中高一貫校を受験予定です。
もちろんメリットを理解しての選択ですが、公立ほどの多様な価値観を持つ子どもと触れ合う機会は少ないでしょう。
世界はいろんな人間でできていて、誰一人排除してはいけないし、価値観が違う人間があることで社会や産業が発展してきた歴史があります。子供たちにもそれを肌で理解してもらいたい。なので、ここは意識していきたいところです。
集団でしか育めない精神がある
「周りの人からの肯定的な評価を受ける」「周りの人に支えられていることを実感させる」「他者との同様性に気付かせる」これらは、すべて集団の中でしか実感できないものです。
未就学児の今は、家族という小さな単位の中で声掛けをすることで、少しずつ芽生えさせていける。
でもこれから子どもは親の知らぬ世界に羽ばたきます、それは決定事項です。避けられない未来であります。
その時に、少しでも躊躇なく・不安なく飛び立てるように、小さなころから「初めての人と会う機会」「親以外の大人と会い、意見をする機会」を増やしたいです。
気づきをたくさんくれる本でした
仕事ではもちろん、子育てにおいても使えるマインドセットだと思います。
子どもを連れていきたい環境のイメージができてきたので、どの場がふさわしいか(初めての場所で、いろんな子がいて、意見交換ができる場があれば…)もう少し調べていきたいです。
★★★(★3:心の栄養になる)

にほんブログ村