
どんな本?
モモ / ミヒャエルエンデ 作。
「時間」をテーマにした、児童書であり哲学書。
この本から得られること
- 時間の使い方を見直すきっかけ(心が豊かになる活動に時間を使いたい)
こんなアナタへおすすめしたい
あらすじ
廃墟となった円形劇場に住む、少女モモ。
モモがいると、なんだか優しくなれて、想像が豊かになって、毎日が楽しい。そんな不思議な力を持つモモは、街の人にとって大切な存在になっていきます。
ある日、街に「灰色の男たち」が現れ、街の人々の様子がおかしくなります。大人も子どもも、せかせかと、忙しくなっていくのです。「時間」を奪われた街の人たちを救うべく、モモは冒険に出ます。
すべての大人たちの物語
私たちは、毎日忙しく生きています。
「ちゃんとした暮らし」「良い暮らし」が幸せに繋がると信じて、いかに効率的に日々を過ごせるかを考えています。
さらに「しっかりした母に見られたい」「優しいママに見られたい」「オシャレな人に見られたい」といった自己実現欲求も加わって、ますます忙しい毎日です。
時間を盗まれた街の人々は、まさに現代に生きる私たち大人自身。
大人たちが時間を盗まれてから、子どもはこうこぼします。
「子供に構ってくれる大人がいなくなった。」
なんて心に突き刺さる、冷静な評論でしょうか。
「うまくやる」のが、カッコイイのか?
時間を短縮しようとすると、どうしても効率的な処理が求められます。
それが、俗にいう「うまくやっている」状態であり、「クール」でもあります。
しかし、一番最初に時間を盗まれた人を見て、モモの友人・ジジは
「どんなことにもヤツ一流の考えを持っていた(のに、今のヤツはそうではない)。」
と言います。
「うまくやる」と、画一的になってしまう。老いも若きも、エリートもそうでない人も、「その人なりの一流の考え」というのは尊い。どんな人の考えだって尊い。
なのに私たちは、一番効率的な思考を「カッコイイ」と思ってしまう。ああなりたいと思ってしまう。それって、豊かなんでしたっけ?
子どもとの時間を「無駄」だと思いたくない
お金を稼ぐこと、私というアイデンティティを確立するために没頭すること。それも立派です。
ですが、友人、コミュニティ、趣味、ぼーっとする時間は、果たして、無駄・浪費なのでしょうか?
家族や子どもと過ごす時間は?
本を読みたい、勉強したい、ブログ/インスタに投稿したい、オシャレをしたい、ダイエットがしたい…そのために、子どもと遊ぶ時間なんてない。って、突き詰めると、思ってたんです。認めたくないけど。
だけど本当は、子どもと遊んでいる時間を、「無駄な時間だ、身にも金にもならない、節約しなきゃ」と思いたくない。
子どもと過ごす時間に、意味なんて求めなくていい、ただそれだけでいい、って思いたい。
ママも自分の人生もがんばりたい
「マズローの欲求5段階」というものがあります。人間の欲求を5段階のピラミッドに表したものです。
最下層は、「生理的欲求」。人間が生きていくための根本的な欲求を指します。これが満たされたら、次の「安全の欲求」を求める。その次は「社会的欲求」、すなわち、どこかのコミュニティに属したいという考えです。その次が「承認欲求」。すべての欲求が満たされたら、頂点の「自己実現欲求」があります。人間は、次から次へと欲望が湧いてくる。そして最後の「自己実現欲求」は満たされるのが難しい、特に、私たち現役世代には。
だから、もっとがんばらなきゃって思っちゃうんです。効率的に時間を使って、捻出した時間でアイデンティティを確立しようと。だって、巷では、「時間がない、は、甘え。時間は作り出すものだ」と言われているんでしょう?
この欲求は本当に厄介だと思います。だって私たちは、「自分らしく、良く生きる」ことを目標に今まで育ってきたから。だけど、子どもを産んだ今、それより大事なものがあるって、本当は知っているんです。ただ、流れ来るSNSのフィードの前では、「私だけなにもやってない」と焦るしかなくて。
「モモ」は児童書ではありますが、私はこれからも何度も読み返すでしょう。今回はamazonオーディブルでの視聴でしたが、愛蔵版(紙)も購入したいと思います。大変オススメです。
★★★★★(価値観を変えた傑作)