
どんな本?
池上彰の行動経済学入門 / 池上彰
社会に採用されている行動経済学に基づくナッジと理論を、池上彰流の解説で読みとく。
この本から得られること
- なぜ自分はこの行動をとってしまうのか?という問いに対する答え
- 顧客への働きかけの方法
こんなアナタへおすすめしたい
感想
実は無意識に他人の後押しを受けている
先日、ニュースで「ナッジ」という言葉が紹介されていました。英語で「軽く肘をつつく」、つまり望ましい行動をとるように後押しすることを意味します。
そのニュースでは、看護師の服を日勤・夜勤で色を変えたところ、残業が減ったと紹介していました。理由は以下です。
早く帰れそうか?業務を変わろうか?という声掛けが増えた
就業間際、医師から日勤への連絡が減った(夜間勤務者に連絡するようにした)
日勤で自分1人色が違うと、早く帰らなきゃ!と思うようになった
実は社会では、この「ナッジ」が溢れています。これは「行動経済学」をもとに作成されています。
行動経済学は新しい学問ですが、近頃ノーベル経済学賞を受賞する学者が増えたことで注目を浴びています。
たとえば、
確証バイアス自分にとって都合の良い情報ばかり集めてしまう
現在バイアス
未来の利益より現在の利益をとってしまう
など、日常生活での「あるある!」を論理的に解明しています。
若手の頃に知りたかった理論が満載
私はプロダクト企画を仕事としているので、この本に載っていた例示はほとんど知っていて、「よくやる~!」と何度もうなづきました。
でも、ここまでくるのに紆余曲折ありました。まず、仕事では誰も理論は教えてくれません。
「なんかこういう法則がありそうだな…?」「他社もやってるということは、効果があるのかな?」と、情報を足で稼いで今に至ります。
そのプロセスが大事!と言ってくださる方も多いけれど、私自身はその時間には価値を置いてなくて、この本を読んだとき「もっと早くに出会っていれば!!」と思いました。
若手社会人の方たちにはぜひ一度読んでいただきたい良書です。
行動経済学の入門にちょうどよい内容を、池上彰さんが丁寧に解説してくださります。
(もしかしたらベテラン社会人の皆様には、ちょっと物足りないかもです。)
見破る力を持つべし
会社で、トンデモ理論を展開する方がいらっしゃいます。
そういう方は大体、数字に弱い。手元に、それなりの数値があればそれを自分の都合の良いように解釈してしまい、こちらからするとその数値が何故この結論に行きつくのかわからない、ということがありました。
数字や理論に強くなる、知っている、というのは、武器になります。
たとえば。
この本に、「手術の失敗率5%と聞くより、成功率95%と聞いた方が印象が良い」と紹介されています。
でも、数字に強ければ、この数字が同じであることに気付く。他人が用意した恣意的な数字に惑わされることはありません。
理論を知ること、数字に強くなること。これは自分を守る術でもあります。
悪魔の理論にもなりうる
「オプトイン」というものがあります。「(無作為で)同意したとみなす」ことです。
たとえば、ネットショッピングで商品を購入したら、メールが届くようになった。これもメール配信に「オプトイン」で同意しているからです。
池上さんは、本作で「オプトインにすれば同意を得られやすい」という事例を紹介していました。
しかし、私は仕事をする際、本当に大事なことはあえてオプトアウト、つまり顧客に選んでもらうようにすることがあります。
何も知らずにオプトインさせることは、私の「美意識」に反するからです。
行動経済学は、ともすれば他人を意のままに操れる「悪魔の理論」になりうると感じます。
だからこそ、私たちが自分を律して、この新しい学問を最適に使っていく人間力が求められると思いました。
(ここで、先日ご紹介した「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」と話が繋がって、読書に無駄は存在しないなぁ…と感動した瞬間でした)
★★★★☆(一生で一度は読みたい)
※ただし、ベテラン社会人にとっては★★☆☆☆(楽しめる)。